日本共産党道議団(大橋晃団長)は六日、道庁内で記者会見し「北海道における医師不足を打開し、地域医療を守るために〜日本共産党道議団の提言」(全文)を発表しました。
北海道の医師数は面積あたりの数で全国最低、ベッド百床あたりの医師数では四十五位と、全国のなかでもとりわけ医師不足の深刻な地域です。
党道議団はこの間、根室、旭川、江別、羅臼、羽幌など医師不足の深刻な地域を訪問し、首長や病院長、患者・住民らと懇談を重ね、議会でもたびたび取り上げてきました。提言はこれを踏まえて発表したものです。
提言の柱は、①国の責任で地域医療確保の抜本的対策をとらせる−北海道あげて国に働きかける、②道が主体となって当面の医師確保の解決策を確立する―の二つです。
提言は、今日の危機的な自体を招いた根本的な原因が、日本の医師数をOECDのなかでも最低グループにした政府の医師数抑制政策にあることを指摘。医大の定員を増やすこと、とりわけ深刻な産科、小児科については抜本的な緊急対策を取らせることなどについて、「北海道あげての強い運動にしていく必要がある」と提起しています。
国が中心となって解決すべき問題は中・長期的なものが多いことから、当面の問題解決には道の役割が重要だと述べ、これまでの諸対策を抜本的に強化すること、地域医療対策協議会を拡充し道の役割を強めること、とくに医師引き揚げについても報告させ協議の対象とすること、医師を道職員として採用し派遣するシステムをつくること、地域医療を担う総合的力量を持った医師づくりに本格的に取り観むことを求めています。
大橋道議は「医療危機打開は知事選、道議選など地方選の大きな争点。各方面にこの提言を示し、大いに議論していきたい」と語っています。
(07年03月07日付「しんぶん赤旗」掲載記事より)
医師不足問題はますます深刻化し、最近だけでも「内科医不在の恐れ」(根室市立病院)、「小児科・産婦人科休診へ」(釧路労災病院)、「産婦人科医3人、旭医大派遣打ち切りへ」(旭川日赤)、「救急外来停止へ」(羅臼町国保病院)など、地方中核都市にまで及んでいます。また産科、小児科だけでなく内科、外科などの基幹科目にも及んでいます。
その結果、「釧路まで通院に片道2時間」(根室市)、「天売から札幌まで転院6時間、赤ちゃん死産」(羽幌町)など、患者・住民に深刻な影響が現れています。
また、医師不足が医師の過重労働を生み、小児科医が過労死で労災認定されるというケースも生まれています。
さらに、道が指定したへき地支援のための「拠点病院」19のうち8病院が医師派遣などの支援活動を中止し、道が認定した地域周産期母子医療センター25施設のうち3施設ではお産の取扱いを停止するなど、国や道が作った制度そのものが機能しなくなる事態も生まれています。
小泉構造改革による一連の医療制度改悪によって、患者負担がどんどん引き上げられ、「金がなければ医療が受けられない」状態が強められていますが、医師不足などによって「金があっても医療が受けられない」状況が広がっています。
これらはいずれも「すべての国民が健康で文化的な生活を営む権利を有する」(憲法25条)、「法の下での平等」(同14条)といった憲法の原則にも反する事態と言わなければなりません。
地域医療を確保することは、「住民の福祉の増進を図ること基本」(地方自治法第1条)とする地方自治体にとっても第一義的な課題となっており、今日の地域破壊から道民を守る焦点となっています。
日本共産党は、2月7日「深刻な医師不足を打開し、『医療崩壊』から地域をまもる日本共産党の提案」を発表し、今日の事態を抜本的に打開する全国的な立場での提案を行いました。
北海道は全国のなかでもとりわけ医師不足の深刻な地域であり、日本共産党道議団はこの間、根室市、旭川市、江別市、羅臼町、羽幌町など医師引き揚げなどで医師不足の深刻な地域を訪問し、首長はじめ自治体関係者、院長など医療関係者、患者・住民などと懇談を重ね、議会でも度々取りあげてきました。
これらを踏まえ、北海道における医師不足を打開し、地域医療を守るための提言を行います。
今日の事態を招いた根本的な原因は、日本の医師数をOECDのなかでも最低グループにした政府の医師数抑制政策にあります。臨床研修制度のスタートは、医師不足を顕在化させるきっかけになったものであり、原因ではありません。
したがって、医師不足の根本的な解決には、医師の養成数を増やすことが必要です。 政府は一貫して「医師数は足りている。問題は偏在だ」と言い続けてきました。
しかし、事態の進行に一部手直しをして、2006年8月「新医師確保総合対策」を発表し、10県について10年間の限定付きで医科大学の定員を10名を限度に増やすことを認めました。
しかし、北海道はこれからはずされました。それは人口10万人当たりの医師数200人以下を最大の基準にしたからです。
北海道の人口10万人当たりの医師数は216.2人であり、全国平均を上まわっています。しかし、面積当たりでは全国最低であり、また実際の労働実態を反映するベット100床当たりの医師数では全国45位と最下位グループです。何よりも東北6県プラス新潟県という面積に広大な過疎地域を抱える実情は、特に道東、道北などでは人口10万人当たりの医師数だけでははかれないものがあります。
すでに知事も昨年から国に要請をしていますが、北海道あげての強い運動にしていく必要があります。場合によっては道州制特区推進法に基づく第2次の提案のなかに、「道立札幌医大の定員については、知事の権限で決定できる」という権限移譲を盛り込むことも検討すべきです。
これまで国は、医科大学での医師の養成や臨床研修制度については対応してきましたが、地域とりわけ自治体病院における医師の確保については「大学医局に丸投げ」してきたのが実態です。今日の事態は、このやり方だけではもはや解決できないことを示しています。
国の責任で地域の医師確保についての抜本的な対策を取らせるよう働きかけます。
全道市長会・町村会はじめ、地方団体から要望の強い「医師研修終了後、一定期間医師不足地域の医療機関に勤務することを義務付ける」などの対策については、各界の意見を十分に反映させた検討の場で慎重に検討すべきです。
「全道で『お産ができる』という市町村は180のうち37」(「しんぶん赤旗」調べ、06年度)という実態は、少子化を加速させる要因にもなっています。
産科医、小児科医が減少する要因は、昼夜を分かたぬ厳しい労働実態、それに見合わない診療報酬、医療訴訟の増加、女性医師の増加などがあげられますが、安心して子どもを産める周産期医療体制を確立することは、日本の将来にも関わる問題であり、国の責任で抜本的緊急対策を取らせる必要があります。
国は「都道府県が中心になって対応すべき」というだけで責任回避を図っていますが、このような責任回避を許さず、都道府県が行う対策についても、抜本的な財政支援を強めさせることが必要です。
国が中心となって解決すべき問題は中・長期的なものが多く、当面の問題解決には広域自治体としての都道府県の役割が重要になります。
医師引き揚げを突然通告された自治体や病院では、「医師のことを考えると夜も眠れない」(道東のある町長)、というほど町を挙げての大問題となります。大学医局などを飛び回っても殆ど解決のメドが立たない場合が多く、多くの首長からは「1自治体の努力の限界を超えている」との声が出され、道のイニシアチィブに期待する声が大きくなっています。
道はこれまでも一定の努力はしていますが、今日の事態に対応するためには、抜本的な努力と対策が必要です。
道はこれまでも、地域の医師確保対策として、札幌医大地域医療支援センター、地域医療財団によるドクターバンクなどの諸対策を行ってきましたが、今日の事態にあわせた抜本的強化が必要です。
北海道地域医療対策協議会は、いわゆる「名義貸し」問題を契機に全国に先駆けて作られ、医局・大学の壁を越えた「医師派遣(紹介)連絡調整会議」など、一定の成果をあげていますが、今日の事態は「焼け石に水」というのが正直なところです。
いまこそ抜本的な拡充と道の役割の強化が不可欠です。
「医師派遣(紹介)連絡調整分科会」では、自治体からあがってきた医師派遣要請を3大学の医局間で協議し、調整をしていますが、医師の引き揚げについては協議の対象としておらず、それぞれの医局の意思で行われています。
多くの自治体や病院では、突然引き揚げを通告され、医師探しや事後対策に奔走するといったことが繰り返され、一方的なやり方に対する批判の声が出されています。
分科会に引き揚げについても報告させ、協議をすることとし、大学・医局間で調整するシステムを道の責任で作るべきです。
「自治体病院等広域化検討分科会」で行われている広域化の論議については、機械的統廃合になることなく、地域の実情に応じ病診連携、病病連携など、住民の医療ニーズに合わせた連携体制の構築を基本とすべきです。
広域化の議論を市町村合併推進構想の60パターンと連動させるべきではありません。
産科・小児科の集約化・重点化については、「過労死予備軍」といわれる産科医・小児科医の現実から一定やむを得ないものがありますが、その場合であっても、住民と自治体の合意を前提とすることが必要です。
産科については少なくとも通院時間1時間以内を最低条件にすべきです。
「集約化」などに住民の声を反映させるためにも、地域医療対策協議会に住民代表を参加させることを検討すべきです。
過去における奨学金制度のあり方等にも学び、「金で縛る」という考えでなく、地域医療への情熱を持った医師を育てるという観点が重要になります。
医師を県職員として採用し、自治体等からの要請に応じて派遣するシステムは、長崎県、三重県、和歌山県、大分県など8県で行われており、道としても実施を検討すべきです。身分は道職員でも、人件費は派遣先の自治体負担となるので大きな予算は必要ありません。
地域の第1線では、オールラウンドな力を持った臨床医がとりわけ必要になります。
多数の専門医をそろえる、ということが難しい状況の下では、総合的な力量を持った医師が地域に密着した診療を展開することの方が大きな力を発揮します。
札幌医大の地域医療総合医学講座、北大の総合診療部、一部の民間医療機関で総合医、家庭医などの養成が取り組まれていますが、まだ全体から見ると一部の取り組みです。
これをさらに広げていくために、道としても本腰を入れた取り組みが求められます。