地方分権が叫ばれる時代にあって、地方議会の役割も益々大きくなっています。
一方、地方自治体をめぐる官製談合や汚職の多発など、様々な不祥事に対し、議会がチェック機能を果たしているのかが問われています。
また、北海道をはじめ多くの自治体で財政危機が叫ばれていますが、行政のムダ遣いとともに、議会についても海外視察や政務調査費など税金の使い方についての批判の声が高まっています。
さらに、今期は4人の道議会議員が収賄、選挙違反、暴力行為で逮捕されて辞職に追い込まれるなど、政治倫理の面でも厳しい批判が寄せられています。
道議会では、これらの声も踏まえて、議会改革等検討協議会を設定し改革の提案を数次にわたって行ってきました。この中にはわが党も一致できる内容も若干含まれていますが、多くの点で道民の声に応えるという点では極めて不十分なものです。
日本共産党道議団は、これまでも「道議会を道民に開かれた闊達な議会とするために−日本共産党の道議会改革の提言」(2002年11月)、「道民に開かれ、理解が得られる道議会を目指して−日本共産党の提言」(2006年1月)など、その時々の課題を中心に提言を行ってきましたが、ここに道民の皆さんから寄せられた意見も踏まえて、新たに道議会改革の提言を行います。
税金を使って観光旅行まがいの視察を行うという批判の強い海外視察旅費については、埼玉県、千葉県、高知県など9県が凍結・休止しており(2005年7月現在)、市町村議会では多数にのぼっています。
わが党は、「道議会における行政視察の抜本的改善のための提言」(1994年3月)で、海外視察旅費の廃止を提案し、その後公費による個人・会派の海外視察はいっさい行っていませんが、改めて議員個人や会派による海外視察旅費の廃止を提案します。
1期4年間で120万円という限度額を100万円に削減しても、道民の理解は得られません。
海外視察旅費は、2004年度で49人、約4,700万円が支出されていますが、05年度は23人、約2,400万円となり、06年度は11月末でゼロです。
このことは、必要性そのものがなくなっていることを意味しています。
海外視察が必要な場合は、政務調査費で行うこととし、報告も義務付けるものとします。
政務調査費は、調査研究・報告など議員活動にとって必要なものですが、その使途が公開されていないため、「第2の歳費」という批判を生んでいます。
最近では政務調査費の不適正な使用によって東京都の公明党目黒区議団が全員辞職するといったことや、自民党港区議団が飲食に使用していたことで返還するといったことも生まれており、道議会においてもかって道議会議員が愛人のために道政調査研究交付金(当時)をつぎこむという事件が明らかになっています。
政務調査費による支出については、1枚の報告書ではなく、すべてを記録し、領収書を添付することを義務付けます。これらを情報公開の対象とします。
宿泊に伴う食事などを除き、飲食への使用を禁止します。
5万円以上の支出についてのみ領収書の添付を義務付けるのでは、ごく一部しか明らかになりません。
交付額についても、現在の月53万円から2000年以前の月48万円に戻し、原則として会派交付とします。これによって約5000万円の節約が可能となります。
わが党道議団は5年前から領収書等も含めて求めがあれば公開しており、引き続き自主的な公開を続けていきます。
道議会として2006年度議員報酬の10%カットを実施しましたが、これを2007年度も継続します。
これにより、議員定数4人削減を上まわる約1億1,900方円の税金の節約になります。
また、期末手当についての議員特別加算を廃止し、一般職員と同様にします。
費用弁償については、実費主義を基本に削減を図ります。
すでに2006年1月の提言で提案したように、札幌市や小樽市などの日帰り圏は、これまでの15,000円と16,000円を、交通費実費プラス諸雑費に、また宿泊圏は、これまでの20,000円を14,900円にするなどの削減を実施します。
同時に、議会への出欠の事実確認を厳密なものとします。
道内調査時の食糧費の使用や各派会長会議など諸会議時の弁当など、食糧費の使用について総点検し、節減を図ります。2005年度の支出は、159万円になっています。
委員会の道外・道内調査についても、目的に沿ったものとし、できるだけ簡素なものとします.
議長肖像画など、道民から批判の出ている支出についても、写真にきりかえるなど、抜本的見直しを図ります。
事前に質問・答弁をすりあわせ、議場では用意した原稿を読み合うだけ、という過度な「答弁調整」が、議会での論議を緊張感のない、わかりにくいものにしています。
都道府県議会議長会の都道府県議会制度研究会の報告「改革・地方議会」でも、「議会審議の質疑に際し、あらかじめ質問内容を執行機関に通告し、回答を準備させ、双方が用意した原稿を読み上げるといった慣習を改めるべきではないか」と問題堤起をしています。鳥取県議会をはじめ、少なからぬ議会でこれが実践に移されています。
道議会においても、2003年7月「答弁調整」を改め、「意見交換」にとどめる、との合意がなされましたが、実態は依然として「答弁調整」が続いています。
いたずらに議会を止めることを目的にすることは論外としても、すりあわせなしの真剣勝負の論議を展開することは、道民にわかりやすい論議となり、議会への信頼を高めることになります。
毎定例会で行われていた代表質問は、10年前から第1、第3回定例会のみとなりましたが、各会派を代表する総括的な質問は、議会論議の柱となるものです。
各定例会で代表質問ができるように改めます。
1999年から実施された予算特別委員会の持ち時間制は、自由で闊達な論義を困難にし、「答弁調整」を促進する結果を生み出しています。また、少数会派の質問時間が著しく短縮されるなどの弊害を生み出しています。
持ち時間制でなければ期間内に消化できない、という理由についても、かってのような空転が少なくなった状態のもとで、再検証が必要です。
持ち時間制を廃止して通告制を復活させ、時間等について必要な場合、理事会で調整することにします。
有権者の基本的権利の一つである請願・陳情について、現状は多くの場合審査が行われず、改選期に自動的に審議未了で消滅しています。
道民の請願権に基づく請願・陳情は必ず審査し、請願人からの趣旨説明の申し入れがあった場合はこれを受けることとします。
陳情については、2004年度までやられていたように、請願と基本的に同じ扱いとします。
常任委員会、特別委員会を定例の委員会だけでなく、随時調査などによって所管する課題の実態を把握し、住民の声を聞くなど、活発なものとします。
議会が民意を把握する制度として、公聴会、参考人制度がありますが、あまり活用されていません。
都道府県議会議長会の研究会が提案しているように、当初予算審議にあたって、公聴会を開くか、参考人を招請する、また委員会の所管事務調査において、学識経験者に限らず、一般住民を参考人として招請する、などを実施します。
今期は、4人の道議会議員(自民2、民主(推薦を含む)2)が逮捕され、辞職に追い込まれるという、道政史上例を見ない不祥事が続出しました。
その内容は、収賄1人、選挙違反1人、暴力行為2人ですが、選挙違反や暴力行為は論外としても、収賄で逮捕された渡島支庁選出道議の場合、背景には企業団体献金と「口利き」という多くの道議会議員に共通する問題があります。
わが党は、国、地方をつうじて企業団体献金を法で禁止することを提案していますが、法改正が実現する前にも、道議会として「企業団体献金を受けることを自粛する決議」を行って、自主規制することを提案します。
少なくとも堀前知事が2期目に実行した、指名登録業者からの献金は受けないということだけでも直ちに実現すべきです。
「口利き」が談合や汚職に発展することは、これまで多くの例で示されていますが、これを防止するのには、「公開」が特効薬となります。
すでに鳥取県などでは、議員の職員への働きかけについてはすべて記録を残し、これを公表するというシステムを作って効果を上げています。北海道としても、口利き情報を記録し、公開するシステムを作ることを提案します。
北海道栗山町をはじめ、都道府県も含めて議会基本条例を制定する動きが強まっています。
三重県議会が「議会基本条例と今後の議会改革」と題するフォーラムを開いていますが、「議会基本条例の制定は議会の夜明けに例えることができる」(大森弥東大名誉教授)とその意義が強調されています。
本来は行政と議会を含めた「自治基本条例」が理想とされていますが、北海道の場合、道が行政基本条例を2002年に制定し、いわば「片肺飛行」の状態となっています。
この際、「北海道議会基本条例」(仮称)の制定を提案します。
その内容については、他府県・市町村などの先進事例の研究を含め、具体化することが必要ですが、さしあたって次のような点が盛り込まれる必要があります。