平取ダム建設事業について道としての慎重な検討を求める要請書 |
12.10.25 |
2012年10月25日
北海道知事 高橋 はるみ 様
沙流川総合開発事業平取ダムの検証結果について、北海道開発局から知事意見の照会があり、道は29日までに回答するとしています。
「現計画(ダム)案が最も有利」という評価結果が記された検証結果報告書が示されて以降に実施されたパブリックコメント(9月11日〜10月10日)に対する意見や、10月3日におこなわれた学識経験者、流域住民からの意見聴取の中でも、様々な意見が述べられています。「ダム案が有利」という評価が住民理解を得ているとは決して言えず、住民の安全を守る責務を負う道としての検証と民主的な手続きにもとづく判断が求められています。
検証作業と道民への説明が求められている課題がいくつかあります。
開発局のシミュレーションでは、「土砂の堆積はほとんど起きない」とされていますが、「100年に1度の洪水が100年後に起こる」という条件設定がされており、2003年と06年、相次いで300mmの大雨に襲われたことが考慮されていないことは問題です。
第2は、2003年洪水で発生した流木の問題が検討されていないことです。二風谷ダムでは、流木を止める仕組みが働かず、その後強化された同ダムの現在の流木止めネットも洪水時に流木を止められないと指摘されています。平取ダムでは、二風谷ダムよりはるかに小さな放流ゲートに流木が押し寄せます。平取ダムの計画には流木対策が示されていません。
第3に、1997年の「二風谷ダム建設差し止め訴訟」の判決が生かされていない点です。判決では、“ダムによって得られる便益と、ダムによって失われるアイヌ文化を比較するための調査さえ怠った”と指摘されています。平取ダムでは調査にとどまり、比較検討はされていません。
以上、3点に限って指摘しましたが、道として検証すべき課題はほかにもあります。知事は先に、開発局に対して、サンルダム建設の継続に「異存はない」と回答しましたが、仮にサンルダム、平取ダム、幾春別川総合開発が推進されれば、今後の道負担は総額144億円に上ります。
開発局は「29日まで」と期限を切り、知事の回答を求めていますが、拙速に答えを出すのではなく、ダム反対派を含む道民各層の意見をよく聞き、道独自に検討し判断することを求めるものです。
以 上