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論評/解説
幌延深地層研での核のゴミ処分問題

幌延深地層研での核のゴミ処分問題

道原発連 米谷事務局長に聞く

「原発ゼロヘの転換」は今回の総選挙の大きな争点になり、中でも原発の稼働でたまりつづける核のゴミ=使用済み核燃料の処理・処分をどうするかは今後の大きな国民的課題に浮かび上がりました。原発問題全道連絡会(道原発連)の米谷(まいたに)道保事務局長に問題点を聞きました。

地盤軟弱地震多発も

幌延町位置図 原発が稼働すれば処理・処分できない核のゴミが増え続けます。危険な負の遺産を将来世代に押し付けないためには、まず「即時原発ゼロ」を実現することが必要です。

使用済み核燃料は放射能が非常に強い高レベル放射性廃棄物で、半減期(放射性元素の原子数が崩壊によって半分に減るまでの期間)が数十年から何百万年に及ぶものが含まれています。その処分は何万年もの単位で安全かどうかを考えなければなりません。このことは原発建設当初からわかっていたことです。

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地下施設ィメージ図地下施設ィメージ図(幌延深地層研究センターホームページから)

日本共産党中央委員会原発・エネルギー対策委員の鈴木剛氏は「核廃棄物を安全に処理・処分できる方法はまだない。技術研究を進めながら、結論が出るまでは厳重に管理していくことが必要です」と強調しています。

処分方法の案として①宇宙に捨てる②海溝深くに捨てる③地中深くに埋める―などの案が検討され、結局、国は③の地中深くに埋める、つまり地層処分の方針を決めました。

2000年に「地層処分法」を制定し、2002年から処分場の公募を始めましたがいまだに誘致に手をあげるところがなく、行き詰まっています。

北海道の幌延(ほろのべ)町には日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)の幌延深地層研究センターがあります。使用済み核燃料の地層処分を「研究」する施設で、地表から300m以深まで調査坑道を掘って地層処分技術を研究するという計画です(図)。しかし、ここを「処分場」にしようという動きが続いています。

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日本科学者会議会員の清野政明氏は「幌延町は処分場の不適地です」と話しています。

清野氏によれば、幌延町と周辺地域にはサロベツ断層帯があり、M7.6程度の地震が4千年〜8千年の間隔で発生するので、10万年間に幌延付近で大地震は12から25回発生すると予測されているのです。

道北地域には地震活動によりできたと考えられる特徴的な地層の構造がよく見られます。これは地殻変動が進行中のためであり、幌延の深地層研究センターのある地域は、地盤が軟弱で、噴砂現象や地盤の液状化なども予想されるというのです。地層処分場としても地層研究施設用地としても、幌延は明らかに不適地です。

町の振興に役立たず

幌延深地層研究センター幌延深地層研究センター(北海道幌延町)

いまだに安全な処理・処分の技術が確立されていない使用済み核燃料を、北海道の大地に埋めようとする動きが強まっています。

「核廃棄物の誘致に反対する道北連絡協議会」代表委員で日本共産党幌延町議の鷲見悟氏は「幌延の処分場誘致派の思いは当初と変わっていない」と指摘しています。

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鷲見議員は昨年6月の幌延町議会で「国から文献調査の申し入れがあるようだが、どう考えているか」と宮本明町長に質問しました。

文献調査とは核廃棄物処分場を誘致するための立地調査の第1段階で、調査を受け入れた自治体には交付金が支給されます。

町長が「文献調査は検討課題だ」と答弁したため町内は騒然となり、あわてた町長はマスコミの取材に「3者協定は守る」と表向き文献調査に応じることを否定しました。

3者協定とは「深地層研究センターの施設は研究を終えたら埋め戻し、放射性廃棄物は持ち込まない」という北海道と幌延町、日本原子力研究開発機構(旧核燃料サイクル開発機構)との取り決めのことです。

しかし処分場誘致の推進派の考えは初めから変わっていません。鷲見氏によれば、推進派は誘致をはじめた12年前から「20年計画の事業だが10年後には処分場誘致運動に移行する」と明言し、町長は「地上施設は農業施設に使いたい。これは原子力機構も認めてくれる」と語っています。2010年10月に原子力研究開発機構評価委員会は「地下施設はジオパークとして存続させ、地上のPR施設は民間団体に移管する」とするなど、埋め戻すことも閉鎖することも考えていないのです。

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深地層研究センターの事業費について、国内では幌延町と茨城県東海村、岐阜県瑞浪(みずなみ)市の3カ所で20年間で合計1600億円の事業計画ですが、このうち幌延が1040億円で3分の2を占め、瑞浪市は「地層研究はするが地層処分の研究はしない」との協定を結んでいます。

幌延町だけが地層処分研究の対象になっているのです。

鷲見氏は「幌延町には電源3法交付金が毎年1億5000万円交付されており、立派な施設がいっぱいできていますが、有効に使えないものもあります。〝地層処分反対派には貸さない〟というとんでもない施設もあります」と説明。「一方、2600人の町民の年間所得は180万円以下が2割、400万円以下が6割を占め、町民が豊かになっているわけではありません。酪農の町なのに農業振興予算は、年間4億円のみで、しかも町単独予算はほとんどありません」と告発します。

幌延深地層研究センター事業は、町民の暮らしや酪農の振興にはまったく役立っていないのです。

(12年12月22日・23日付「しんぶん赤旗」北海道・東北のページより)