泊原発/住民の安全を無視する「新協定案」 |
日本共産党北海道委員会と党道議団、小樽地区委員会は7月30日、はたやま和也党道政策委員長、菊池よう子小樽地区国政対策委員長、太田勤岩内町議が、高橋はるみ知事(佐藤高大・道原子力安全対策担当局長が対応)に対して、道が示した「泊原発周辺の安全確認等に関する協定案」を、福島事故を教訓としたものにするよう要請しました。
停止中の原発は再稼働せず、原発ゼロの日本を実現すること、北海道の豊かな自然条件を生かし、再生可能エネルギーの抜本的な拡大を進めることを求め、①「確認協定」ではなく「安全協定」とし、現行の4町村との協定を、福島事故を教訓として改定・充実すること、②拡散予測にもとづき具体的な対策を行なう協定とすること、③泊1、2号機の再稼働を認めないことなどを申入れました。
道側は、協定は平常時における連絡、意見交換等するもの、再稼働は協議事項ではない、今後、国の動きを見極めていく、と、協定に関する道の考え方をくり返しました。
今回、道が示した「泊原発周辺の安全確認等に関する協定案」(仮称、「新協定案」)は、新たに後志管内16市町村(泊村、共和町、岩内町、神恵内村の4町村を除く)と道、北電が締結しようとするものですが、福島原発事故の教訓を反映しない、自治と住民の安全を無視した極めて不備なものです。
「新たに締結する協定に関する道の考え方」では、再稼働に自治体との協議や同意は必要ないとも言い切っています。
そもそも「原発ゼロ」「廃炉」が実現すれば、周辺住民の安全は確保され、安全協定の締結など必要ありませんが、道が示した「新協定案」とは、どのようなものでしょうか。
「新協定案」の問題は、従来の4町村対象の安全協定第2条の計画等に対する事前了解も、第13条の立入調査も入っていないことです。
「新協定案」の名称を「安全確認」でなく「安全確保」に改め、事前了解事項や立入調査事項も明記すべきです。
現に、後志管内の首長のなかからも「なぜ4町村と同じにできないのか」(蘭越町長)、「プルサーマル計画や原子炉設置・増設への同意権などは4町村と同じ内容にしてほしい」(倶知安町長)の声があがっています。これを無視する自治破壊は許されません。
さらに福島後の情勢と民意を踏まえ、再稼働等も事前了解の対象とすべきです。
メルトダウン、大量放射性物質の放出など過酷事故の教訓を踏まえない「協定」「防災計画」では、周辺住民の安全がないがしろにされます。
道が、道民の健康と安全に負っている責務を果たそうとすれば、こういう解釈を示すのではなく、進んで30キロ圈町村も再稼働の事前了解対象に入れるべきです。
「新協定案」はその範囲を、従来の4町村を除く後志管内の16市町村としていますが、これは放射能汚染から住民の健康と安全を守る立場ではなく、後志管内の町村会や小樽市の要求に押されて、提案したものと思われます。
協定の範囲は住民のいのちと健康を守る立場から科学的根拠をもって決めるべきでありSPEEDI(スピーディー)による放射能の拡散予測を考慮することが必要です。
福島原発事故では、放射能汚染の範囲は、30キロ圈にとどまらず、風向きや地形によっては、原発から40キロ、50キロ圏以上にも及んでいます。北海道でも、泊原発から70キロ圈の札幌市も原子力防災計画区域に含めるべきとの要望もあります。
SPEEDIによる拡散予測やIAEAの基準、複数原子炉で同時に事故が起きた場合の放射性物質の核散状況などを踏まえた科学的知見に基づく範囲設定を行なうと同時に、道自身が放射能拡散予測なども打ち出せるよう急ぐべきです。
現行の4町村対象の「安全確保」協定は、過酷事故を想定しないものであり、福島事故を踏まえ、過酷事故を想定した想定に充実すべきです。
例えば、原子力防災対策を重点的に充実すべき地域が、原発から30キロ圏(UPZ)に拡大されれば、地域防災計画では当然、泊原発から30キロ圈内の約8万3千人を超える遠隔地避難、長期避難などに備えた対策を講じなければなりません。
50キロ圏内のPPAでは、約23万7千人の集団退避計画などが必要となります。
現行の「安全協定」で北電は、「地域防災対策に対し積極的に協力する」ことが義務付けられていますが、避難や除染にも責任をもつべきです。北電は23万人の避難に責任を持たなければならないはずですが、現行の協定には何も具体的な取り決めがありません。現行協定も見直し・充実も不可欠です。
意見のとりまとめを迫られる市町村としては、過酷事故に十分対応でき、住民安全に責任をもてる協定をめざすときです。
(T)
(12年08月05日付「ほっかい新報」より)
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