「原子力ムラ」北海道を告発/道政を揺るがし、波紋よぶ真下質問 |
真下紀子道議の2定議会での質問が波紋をよんでいます。
北海道新聞は、新聞の「顔」とも言われる「卓上四季」や「社説」で、質問の主旨や「提言」への高橋知事の対応を批判する記事を載せました。質問から10日以上も経ってからも、編集委員は自らのコラムで「(2定議会の)生ぬるい論議をもどかしい思いで聞いたが、傾聴すべき提言や鋭い追及もあった」として真下議員の質問を紹介しています。
「真下紀子氏(共産)は、泊原発のプルサーマル計画を審議した道の有識者会議の委員らが原発関連企業から寄付を受けていた事実を追及、『北海道版・原子力ムラ』の一端に迫った」(7月8日付)。
マスコミからも高い評価を得ている真下議員の質問の内容を、改めて検証し、道内から「原発ゼロ」の運動を加速させる契機にしたいものです。
一般質問のもち時間は、初回はわずか5分間。真下議員は再々質問まで入れて約7分間を、泊原発の安全対策をすべて原発推進勢力まかせにする「北海道版・原子力ムラ」の構図の解明に注ぎました。
真下議員は初回質問で、大飯原発再稼働を決めた野田首相の決断を「評価」した高橋知事の真意と、泊原発再稼働に対する認識を問い、「再稼働の是非に係わる断層に関する地質調査はどこが行なったのか」と迫りました。
知事は「泊再稼働にあたっては、何よりも安全を優先…安全性については国の責任で確認を」といつもの国まかせの答弁。しかし、危機管理監は「一連の調査は(北電子会社の)北電総合設計が受託…(そこに)元道職員が2名再就職している」と認めました。
知事も「北電から、泊発電所の原子炉を設計した三菱重工にス卜レステス卜の一部を委託したと報告を受けている」と議会で初めて認めました。身内による身内のための調査と言われても仕方ありません。議会に緊張が走りました。
※肩書は2010年当時。同会議の委員は全7人。島津委員は現在、道の有識者専門委員。調査期間は06〜11年度。 | ||
委員 | 寄付者と寄付額 | |
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佐藤正知北海道大学大学院教授 | 電源開発100万円(09、10年度) | |
島津洋一郎福井大学附属国際原子力工学研究所教授 | 三菱重工業300万円(06、07、09年度)、原子燃料工業150万円(06〜08年度)原子力エンジニアリング100万円(06年度) | |
杉山憲一郎北海道大学大学院教授 | 日本保全学会17万5000円(09年度)、北海道エナジートーク21 25万円(11年度) |
福島原発事故後、原子力安全委員会の斑目委員長をはじめ多くの原子力専門家に原発マネーが行き渡っていたことがわかり、専門家への信頼は地に落ちました。大飯再稼働を妥当とした福井県の原子力安全専門委員会の半数の委員も同じでした。
真下議員は、「しんぶん赤旗」と連携し、道内の大学教授らが多額の寄付を受けていたことを突き止めました。調査を進めるとその中に泊原発に関する有識者委員がいることも判明。
事実とすれば、道の原子力政策がゆがめられた可能性があり、何よりも、道民の道政への信頼が揺らぎかねない深刻かつ重大問題です。
再々質問で真下議員が、「今後(道の有識者委員は)原発関連企業等からの寄付は公表し、原発利益に染まっている人は専任しないこと」を提言したのは当然です。
しかし、高橋知事は平然と「専門委員会の委員は…寄付で影響を受けるとは考えていない」と答弁しました。
知事の答弁は、道民の気持ちを全くわかつていないと同時に、このことがその後自民党を巻きこんだ大きな論争に発展することにつながります。
真下議員が一般質問で解明した「北海道版原子力ムラ」の構図―――①再稼働の是非に係わるストレステストは原子炉納入業者の三菱重工が実施、②安全の要となる地質調査は北電の子会社(道のOBが天下り)が受託、③泊原発のプルサーマル計画の安全性を審査する道の有識者会議の3人の委員は原子力関連企業から多額な寄付を得ていた―――。
高橋知事は、これらの事実をすべて認めました。つまり、泊原発の安全対策はすべて「原子力ムラ」により仕切られていたことが真下質問で浮き彫りになったのです。
質問は、「道新」「朝日」「NHK」などが大きく取り上げ、「朝日新聞」は全国配信するなど反響が広がりました。特に、3人の有識者委員(北大教授)に約7百万円もの多額な「原発マネー」が渡り「中立性が疑われる」(真下質問)新たな事態にもかかわらず知事が「専門委員は寄付による影響を受けるとは考えていない」と答弁したことが、火に油をそそぐことになりました。
「道新」の「卓上四季」は「正義の女神は立腹している…中略…かつて北電役員らから寄付を受けていた人はそう言うしかないのだろうが…」。同じ「道新」の「社説」(7/2付)でも「(原発マネーを受け取っていることに)行政や研究者の『常識』ではそうかもしれないが…福島原発事故後は…国民の視線は格段に厳しくなっている。知事や委員にはその自覚が足りない」と痛烈に批判しました。
知事は「もともと道民世論を重視する人」(道庁OB)です。ましてや、真下質問への答弁で、ここまでマスコミからの批判が集中したことに、共産党嫌いの知事が黙っているわけはありません。そこでお得意の「お伺い質問」の出番です。与党議員に知事の〝意向〟を質問させ、「前向き(検討)」の答弁をする―――といういつものシナリオ。今回も自民党がその役割を果たしました。
原発推進、再稼働賛成の自民党は、道議会でも当然ながら泊原発問題で、国や道の姿勢に「賛成」の立場。ところが、7月3日の予算委員会ではなんと「(道の有識者が寄付を受けていたことが判明したが)公平・構成であるべき道の専門委員として適当か」と真下議員のおさらい質問。道側は「今後は国の動向も注視する」と答弁。翌4日の知事総括質疑では、高橋知事は、自民党と真下議員の両方の質問に対し、「委員が原発企業等から寄付を受けるのは、今後は国の動向にも注視しながら検討する」と前日の部長と全く同じ答弁を繰り返し、マスコミの失笑を買いました。
与党に先に質問させて「前向き答弁」することで、共産党に点数を稼がせないし、与党に喜ばれる、〝一石二鳥〟のやり方に、一種の「やらせ」ではないかとの批判もあがっています。
あるマスコミの中堅記者が私にこう述べました。「昨年の泊原発をめぐる『北電のやらせ』問題の追及に続いて、また今回の『北海道版・原子力ムラ』の質問。完全にやられました」「道の幹部からも『共産党がとりあげた問題は、本来マスコミが先に記事にすべきことではないのか』と皮肉を言われました」と。
道政を揺るがした真下道議の質問、短いですからぜひご一読を。
(三上博介)
(12年07月15日付、08月05日付「ほっかい新報」より)
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