大震災・原発事故から1年、道民の命とくらし守る予算こそ |
道議会2012年第1回定例会が2月23日、開会しました。知事が2月に発表した12年度当初予算案規模は、一般会計で2兆7410億円、特別会計との総額で3兆2767億円です。
東日本大震災と福島原発事故から1年を迎え、新年度からは年金や子ども手当が削減されます。そうしたなかで、道の予算案は道民のくらし、福祉最優先となっているのか、原発の危険から道民の命を守る対策は十分なのか――検証します。
一般会計は前年比2.0%減、5年連続の縮小予算となりました。歳入減の要因は、深刻な不況(個人道民税と法人二税で64億円の減)と、国が経済対策として実施していた交付金が縮小され、基金繰入分が474億円減少したことなどです。
地方自治体の財政指標の一つとされる「実質公債費比率」(財政規模に対する借金返済額の割合)について、道は3通りの金利を仮定し、一番高い金利の場合、18年度に25%を超えるとの試算を示しました。
「財政危機」を強調し、行財政改革の対策期間が終了する14年度以降も、道職員・教職員等の人件費削減等が避けられないと印象づけています。
行財政改革の一環で、道営住宅駐車場使用料や道立病院分べん介助料など計91項目の手数料、使用料が改定されます。農業大学校の授業料は月額9900円を1万1300円に、高等看護学院と高等技専は同1万2800円に引き上げるとしています。改定の基礎として「フルコスト」の考え方が導入されましたが、教育や医療・福祉をフルコストで計ることに疑問の声が上がっています。
公共事業費(投資的経費)は3289億円で、前年度から24億円(1%)減のなかで、新幹線対策費(208億円)の34%増が目を引きます。大半は新青森〜新函館間ですが、札幌延伸の波及効果調査費3900万円も計上されました。
知事は予算案の発表の席で、札幌延伸に伴う道負担額が24年間で2900億円になるとの見通しを示しました。しかしこれは、道債償還費の50%が交付税措置されることを織り込んだ数字で、本来の道負担額は4000億円。これには、新幹線の駅周辺開発は含まれてなく、並行在来線の運営費に至っては、いっさい考慮されていません。
知事が、「2900億円という数字は大変大きい」といい、自らの立場を「道民の方々からお預かりしたお金を執行するに過ぎない」と認めるのであれば、並行在来線を含む道内の交通体系のあり方を、全道民的に議論することが優先されるべきです。
知事は、重点政策の3本柱として、「地域経済の再生」「先進モデルの創造」「安心して住み続けられるふるさと」をかかげました。
「地域経済」では、国の雇用交付金による事業が前年度から3分の1に大縮減となります(189億円→65億円)。雇用と中小企業対策費を拡充し、〝地域循環型〟の経済再生が求められます。
第2の柱「先進モデル」として、「環境エネルギー」を掲げていますが、新エネ・省エネ予算は総額4億円弱で前年比横ばい。各地域の創意による「一村一エネ事業費」は46%、「道産エネルギー技術振興事業費」も34%の大幅減です。他方、誘致企業補助金をエネルギー分野にも拡大しました。自動車分野でも、中京圈をターゲットとした企業誘致費2700万円を盛り込むなど、相変わらずの〝呼び込み型〟産業振興策が並びます。
3つめの柱「安心」の最大の焦点は、原発の安全、放射能汚染から道民を守る対策です。知事は予算案発表の記者会見で、記者から核燃料税について問われ、「(泊原発1、2号機の再稼働の)可能性が高まった段階で補正対応することは十分あり得る」と、再稼働容認とも受け取れる発言をしたことは重大です。
防災訓練やSPEEDIの維持管理等を含め、UPZが30キロ圈=後志13町村に拡大されるものの、隣接する小樽市や札幌市は〝カヤの外〟です。
道内で耐震診断未実施の保育所が287か所も残されるなかで、耐震化を促進する道独白の予算措置はありません。学童保育クラブに至っては、耐震化の状況さえ把握していません。道・市町村ともに、「緊急防災・減災事業」の積極的な活用が求められます。
またHACの経営いきづまり償還延期問題など重要課題が山積しています。真下紀子道議の一般質問は12日、13日先議の質疑の予定です。
(12年03月11日付「ほっかい新報」より)
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