2011年08月19日 日本共産党北海道委員会
(1) 緊急の課題
(2)「原発ゼロ」への課題①――電力の需給関係をどう見るか
(3)「原発ゼロ」への課題②――4町村での住民議論を
(4)「原発ゼロ」への課題③――原発利益共同体の「環」を断つ
(1)活断層の存在・火山活動などによる危険性
(2)事故が起きれば、放射能汚染はまっすぐ道南地方へ
(3)建設中止を道南地方・北海道の総意にして、青森県と連携した運動を
(1)安全面も経済性も成り立たない、破綻済みとなった核燃料サイクル
(2)高レベル廃棄物処理場は、日本にも北海道にも、どこにもない
東京電力・福島第一原発事故から5ヵ月が経ちました。今も事故の収束は明確に見通せず、放射能汚染拡大の不安も消えません。
北海道でも、多くの道民が不安の声をあげています。「原発は廃炉にすべき」と82%の人が世論調査(「道新」6月19日付)に答え、泊原発30km圏の住民世論調査でも、泊原発の安全性について「不安」と回答した人が約8割に及びました。「古い原子炉から順番に廃止」「すぐに廃止」と6割の人が答えています(「道新」7月3日付)。これまで岩内町でも町民有志によりくり返し住民アンケートがおこなわれ、不安の声は多く寄せられてきました。
泊から60km圏の札幌・上田市長は泊原発3号機のプルサーマル計画を中止するよう明確に求め、独自に原子力防災計画の策定をすすめています。泊から30km圏の余市町・仁木町を始め全道32市町村議会で「原発からの撤退」や「じゅうぶんな安全性」を求める意見書が採択されています。このうち、函館市や七飯町は、青森県・大間原発に対して建設の「凍結」「建設反対」を求めています。
泊原発や大間原発でひとたび事故が起き、幌延町の新地層研究センターが核廃棄物の最終埋立地となれば、被害は周辺自治体と住民ばかりでなく、北海道全土へと広がる可能性も否定できません。
原発のない安全・安心な北海道を――この声は、多くの道民の願いとなってきています。
日本共産党は6月13日に「原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を――国民的討論と合意をよびかけます」を発表しました。
原発事故には他の事故にはみられない「異質な危険」があるということを、福島原発事故は明らかにしました。放射能被害は空間的に広がり、放射線被爆は将来にわたって、人間の命と健康を脅かし続けます。汚染された地域は人間社会・地域社会の存続さえも危ぶまれます。このような「異質な危険」をもたらす現在の原発技術が、社会的に容認できるかが問われています。
何より、今の原発技術は、莫大な放射能を閉じ込めておく保障や、放射性廃棄物の処理方法も見通しがないなど未完成で危険なものです。そのような中で、世界有数の地震・津波国の日本に集中立地する危険性は言うまでもありません。しかし、歴代の日本政府と電力業界は「安全神話」にしがみつき、日本共産党などのくり返しの警告を無視してきました。
この日本に、安全な原発などありえない――この事実をふまえ、日本共産党は原発からの撤退を政治決断し、5〜10年以内を目標に原発から撤退する計画を策定することを提案しています。緊急的に事故を起こした福島原発や震源地の真上に立地している浜岡原発、老朽化した原発や住民合意が得られない原発は停止・廃炉にし、危険を最小限にする原子力の規制機関をつくることを訴えています。
原発からの撤退と並行して、豊かな可能性のある自然エネルギーの本格的導入と低エネルギー社会に向けて国をあげた取り組みを、今こそ進める必要があります。
日本共産党北海道委員会は、この立場から、議会論戦や住民運動に取り組んできました。道議会では、他の党が原発からの撤退を明確に掲げないなか、真下紀子道議だけが知事の原発依存の姿勢をただし、後志管内、道南地方、道北地方をはじめとした党議員団が住民の不安の声を代弁し、原発の危険性を訴えてきました。
泊原発にかかわっては、6月12日に紙智子・大門実紀史の両参議院議員が周辺住民懇談会をおこない、7月11日には両参議院議員と真下道議、周辺町村議員らで構内調査と北電本社への要請をおこなっています。
この提言は、道民の不安と関心に応えつつ、どのように北海道が原発依存から抜け出したらいいのか、この間の調査・懇談などをもとにまとめたものです。この「提言」をもとに多くの個人・団体からも意見をうかがい、北海道が「原発ゼロ」「再生可能エネルギーの爆発的普及」の先頭に立つことを求める世論と運動を広げ、国会や地方議会でその論戦をさらに進める決意です。
泊原子力発電所は、1988年に1号機(発電量57万9000kW)、91年に2号機(同57万9000kW)、2009年に3号機(同91万2000kW)が稼動し、3機すべてが稼動した場合の発電量は207万kWになります。原子炉容器内でウランの核分裂で熱水をつくり、その熱水の熱によって作られた高温の蒸気でタービン・発電機を回す加圧水型軽水炉(PWR)です。
福島事故後、経済産業省原子力安全・保安院から各電力事業者に緊急安全対策などが指示されています。主な内容と、北海道電力(以下「北電」)からの「回答」は以下のようになっています。
●3月30日――津波に対する緊急対応・緊急点検や電源確保などの「指示」に対し、北電は設備点検などをおこない、高台での移動発電機や代替給水の措置などを講じたと報告しました。
●4月15日――外部電源の信頼性確保についての「指示」に、北電は適切に対応したと報告しました。
●6月6日――新しい耐震指針に照らした耐震安全性の評価を求める「指示」は、8月末が回答期限となっていますが、後述するように北電は、研究者から指摘されている活断層の存在については認めない態度を取っています。
これらの最中に、北電は5月20日、プルサーマル発電で使用するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料体製造のため、原子力安全・保安院に輸入燃料体の検査を申請しました。福島事故の検証もされないなか、全国に先駆けて検査申請を出したことは、道民の不安を増幅することにつながりました。
7月28日には、長期調整運転中の3号機の営業運転再開を表明し、8月17日には高橋知事も容認しました。福島事故の検証や道民の意思や感情をふまえない進め方への批判とともに、次にあげるような泊原発特有の問題が解決されないまま、次々と営業運転・再稼動を進めることは認められません。
北電は、泊原発は多重の安全対策を講じていると述べていますが、その信頼性は本当でしょうか。福島の過酷事故は多重の安全対策が機能しない、ということが起こりうることを事実として示したものであり、その信頼性が根底から覆させられました。このような状況で、少なくとも以下の問題で、北電から納得できる回答がされていません。
●活断層の存在と評価――北電は、泊原発に最大の被害を及ぼす恐れのある活断層は寿都沖50kmの「FB-2断層」とし、その規模はM8.2を想定しています。中央制御室のシミュレーション訓練もこの範囲を想定しています。
しかし、東洋大学・渡辺満久教授(変動地形学)が2009年に、泊原発の西、約15kmの海底から北北西に約70kmの活断層があると学会で発表しました。地震の規模はM7.5前後と想定されています。
しかし、北電はこの活断層を、活断層として認定していないうえ、7月11日の党調査団にも「渡辺教授のデータとの突合せは考えていない」と回答しています。研究者からの指摘にもかかわらず、ボーリング調査などの必要なデータを明らかにしないようでは、道民の不安が解消されないのは当然です。
●基準値振動にもとづく対策――活断層の存在と評価は、地震対策にも影響します。特に加圧水型である泊原発は、構造が複雑であるゆえに配管も多く、溶接部や劣化した部分が地震の振動で破損しないかは、安全対策上の重要な問題です。
北電の耐震安全性評価によれば、基準値振動は最大加速度550ガルであり、それに耐えられるようにしているといいます。しかし、鉛直方向(縦揺れ)となれば550ガルに耐えられる保障はなく、渡辺教授が指摘する活断層はより原発に近いため、今の基準値振動で十分か、問われなければなりません。
直下型地震としては近年では阪神・淡路大震災があり、この時は最大加速度840ガルを記録しています。
●津波の引き波――泊原発はタービンを回し終えた蒸気を冷やすために、海水を冷却水として取水しています。1・2号機の海水取水口は海面から-4.17mにありますが、北電が予測している最大の引き波は-6.13mです。取水不足による冷却機能喪失について、北電は「代替取水措置を取っており、その間に波は戻ってくる」と述べ、取水口の延長措置を講じていないままです。
北電の対応は、福島事故の究明のうえの新しい安全基準にもとづく、抜本的地震対策などが欠けており、安全・安心とは言えません。
●避難範囲――福島事故では、半径30km圏内と、それを越える地域でも避難の対象となっています。事故の規模や天候・風向きなどによっては、さらに放射能被害が広がることが予測されますが、防災対策を重点的に充実すべき範囲(EPZ)は依然として10km圏内となっています。蘭越町など30km圏が原子力防災対策を求めているのに、国と道は拒絶したままです。
その10km圏内からの避難でも、北側は国道229号線と当丸峠だけであり、冬の荒天に重なった場合は避難経路が遮断されかねません。
●情報共有体制――EPZが10km圏内ということから、道は4ヵ町村とは「安全協定」を結び、それ以外は「通報連絡協定」にとどめています。このような線引きが残ったままでは、実際に事故が起きた際に住民を守りきる体制をつくれません。
事故の際に中心的な役割を果たすオフサイトセンターも泊原発から2kmしか離れておらず、小さな事故でも対応できません。
これまでの原子力行政の大きな問題点の1つは、原発の推進機関でもある経済産業省のもとに、原子力安全・保安院が置かれていたことでした。人事面も含め、これでは強力な規制権限を持てず、安全対策が骨抜きになるのも当然です。
後述するように北海道でも、北電役員から形を変えた企業献金や、国や道からの天下りが続いていることが真下道議の質問などで明らかになっています。福井県では、県として安全検証委員会を設置・協議し、新たに「暫定安全基準」をつくり、具体的な必要項目などを示して、安全対策強化を求めています。新潟県では「安全小委員会」と「地震地質小委員会」に慎重派学者を含め、実質的審議をおこなっています。
これらの姿勢に比べ、検証委員会の設置や暫定安全基準の確立、防災計画改定、除染対策や放射能防護対策などで、道の取り組みはきわめて遅れており、国と北電いいなりから脱却できていないと言わざるを得ません。
福島原発事故が明らかにした事実は、未完成な原発技術というもとで、地震・津波国の日本で「安全な原発」などはありえない、ということです。このような本質的問題を抱えつつ、泊原発固有の問題も明らかになっている以上、このまま泊原発を道民が許容できるのか問われています。
日本共産党北海道委員会は、政府とともに道が原発依存の政策から撤退する政治的決断を求めます。そのうえで、次の課題を道民的議論もふまえて克服し、北海道が自然エネルギーの本格的導入と、エネルギー浪費型社会からの脱却に向けて先頭に立つことをめざします。
原発からの撤退が決断される前にも、道民の不安を正面から受け止め、当面の課題でも原発撤退を前提とした対策を取るべきです。
●3号機の営業運転再開は中止を――長期にわたって営業運転の最終検査をできなかった背景には、道民の原発に対する不安の大きさを国や道、北電が認識していたからに、ほかなりません。そうである以上、営業運転を中止し、福島事故の原因と教訓を踏まえた安全審査を厳格におこなうことは当然です。
●1号機の再稼動を認めない――すでに1号機は稼動から20年以上が経って老朽化・経年劣化が懸念されており、本格的な総点検と道民への公表が不可欠です。
原発の安全性を評価する「ストレステスト」は、国民・道民が稼動の是非を判断するのに、原発の危険性についての情報提供を目的にすべきで、このテストで新たな「安全神話」が生み出されてはなりません。テストは電力会社が実施し、原子力安全委員会と原子力安全・保安院が確認することになっていますが、推進機関から独立した権限を持つ、専門家の知見を集めた規制機関が実施主体になるべきです。
何より福島事故の検証が進んでおらず、安全性があいまいのまま、再稼動にふみきるべきではありません。
●3号機のプルサーマル発電計画は中止を――北電は、政府に提出したMOX燃料の検査申請を取り下げ、危険なプルトニウムを燃料とするプルサーマル計画は中止すべきです。日本共産党の要請に、北電は「国策なので粛々と進める」と答えましたが、札幌市長はじめ多くの道民から反対の声があがるなか、強行することは認められません。政府がプルサーマル計画から撤退するとともに、その流れをつくるべく道が率先してプルサーマル中止へと舵を切るべきです。
●過酷事故に対応できる防災対策の強化と、安全協定対象範囲の拡大を――京都府(20km)や新潟県(60km)のように、EPZを独自に拡大するとともに、後志全市町村と70km圏内になる札幌市などへ安全協定の対象範囲を広げるべきです。それにともない、今年1月に修正された道の地域防災計画も、抜本的に見直すことが必要です。
これらの施策を進めるために、道が独自に安全検証委員会をつくり、安全基準に基づく検証結果を道民に公表する「透明な原子力行政」へと、北海道が先頭に立つべきです。
●放射能汚染から、子どもと道民の健康と安全を守る対策を――福島第1原発から放出された放射性物質は、「ウラン換算で広島型原爆20個分」(児玉龍彦東京大学アイソトープ総合センター長)という見解も出されています。今回の事故を教訓に、道民とりわけ放射性物質への感受性が高い子どもの健康を守る対策が求められており、放射線・放射性物質による人体への影響、特に子どもの被ばくに対して最大限の対策を講るべきです。
――国がなし崩し的に「年間100ミリシーベルト」と定めた被ばく限度(基準値)の撤回と、子どもの基準値の厳格化を求めます。埼玉・川口市や福島・いわき市のように、道独自で厳しい基準値の策定を求めます。
――泊原発10km圏に22台設置されているモニタリングポストを、100km圏内の自治体を中心に拡充します。福島事故では、SPEEDIによる予測が初期段階で公表されませんでした。SPEEDIにデータを送るための現地観測・通信機器の電源確保対策を求めます。
――子どもたちが長い時間を過ごす学校や幼稚園・保育園へのガイガー・ミューラー・カウンター(GМ管)の配備を進めます。
――内部被ばくの計測機器(ホールボディーカウンター)の配備と人員を含む体制を強めます。
――農畜産物、水産物、大気、水、海洋、土壌などあらゆる生活環境の汚染状況についてきめ細かく、かつ長期的な観測と情報提供を行うことが必要です。そのために、ヨウ素やセシウムだけでなく、ウラン、ストロンチウム、コバルト−60、トリチウム、中性子など各核種の測定ができる体制、機器、人員の拡充を図ります。
●食品検査体制の抜本的強化を――海水に汚染水が混入したり、稲わらと牛肉の放射能汚染が発覚するなど、道内でも食品への不安が強まっています。農林漁業が基幹産業である北海道にとっては、地域経済にも大きな影響を与えるだけに抜本的な検査体制の強化が必要です。
――食品の最新鋭の検査機器と体制の整備を国の責任で進めさせるとともに、道は民間の能力も活用し、検査体制の強化をはかります。
――政府の責任で、食品に関する暫定規制値を超える食品を市場に絶対に流通させないことを実施させます。道としても、科学者、専門家、生産者、消費者などの意見をふまえ、暫定規制値を検証し、必要な見直しを提言します。
――放射能に汚染された農産物、水産物を市場に流通させないための出荷停止などを効果的に行うためにも、国と電力事業者の責任で放射能汚染に責任のない生産者に損害を与えない万全の体制をとらせます。
――食品による子どもの内部被ばくを防ぐために、▽学校給食の食材の検査体制充実と安全な地元食材による給食(地産地消)のいっそうの拡大、▽水道水の検査とペットボトルの確保などをはかります。札幌市や千歳市、恵庭市などで地下水を取水している企業と防災協定を結び、災害時の水の供給を確保します。
泊原発をなくすうえで、道民世論の合意は不可欠ですが、北電などからの「泊原発を止めれば、冬のピーク時には電力がひっ迫する」という主張に、心配する道民もいることも事実です。
●北電による電力需給の説明は妥当か――北海道電力には、原子力のほか火力、水力、地熱、太陽光などの発電をおこなっています。その総発電量は742万2085kWになり、泊原発による207万kWを除くと535万2085kWとなります。これまで冬の電力使用ピーク時には、本州から津軽海峡の海底ケーブルを使い最大60万kWを送電してもらっていました。これ以外にも、電源開発による水力発電(21万5800kW)、道による水力発電(7万940kW)、1000kW以上の設備を持つ企業などの自家発電(262万678kW)など、これらを単純に合計すれば道内の発電力総計は885万kWを超えます。
発電設備の面でも、休止中の火力も含め北電の発電設備は先のように742万kWですが、道企業局や風力などを加えると総計831万kWの設備があり、原子力207万kWをのぞくと624万kwとなります。前年の最大電力は579万kW(1月)ですから、45万kWの余裕があり、節電なしでも電力不足は起きない――との試算もあります。
省エネ社会への移行をすすめるとともに、今ある発電能力を有効に使い、再生可能エネルギーの普及をすすめ、企業や道民の自発的努力による節電が結びつけば、原発の停止・撤退に向けた展望は開かれます。
炉ごとの稼働、毎日の最大・最低電力など全ての情報を道民の前に公開するよう求めます。
●北電の電力需要見通しは正しいか――北電の需要見通しによれば、電化機器の普及や生産水準の回復・設備投資の増加などにより、年1%前後ずつ対前年比で使用電力が増加すると見込んでいます。
しかし、福島事故を契機に、道民の間に省電力・省エネルギーの機運は、これまでになく高まり、企業活動においても同様の傾向が広がることは間違いありません。
供給量で見ても、北電以外の発電や、今後の多様なエネルギー源の爆発的普及・活用を見込んだものにしていくべきです。
●電力事業者は需給関係を明らかにして電力を確保する責任があり、国や道が同様の責務を負っている――電気事業法18条では、電気事業者の供給義務が明確にされています。北電は、道民の前に電力の需給状況を明らかにするともに、必要に応じて電力の買い取りなどもおこなって、その確保に努めるべきです。「電力不足になるから、被災地への送電も止めなければならない」など、被災地支援を理由に原発稼動を正当化するような言動は慎むことを、厳しく求めます。
国や道は、電力事業者まかせにせずに、専門家の知見も結集した独自の体制・枠組みをつくり、その責務を果たすべきです。
原発立地・周辺自治体に固定資産税や様々な交付金などが行き渡り、行政執行でもその財源に頼らざるを得ない町が、全国にも少なくありません。
真下道議の質問で、道と泊原発周辺4町村への固定資産税や交付金などの総額は、過去21年間で959億円に上ることが明らかになりました。その財源で生活・文化施設などが多く建設されてきた一方で、貴重な地域資源を生かした農林漁業などの従事者や人口の減少が続くなか「このまま原発頼みの町づくりでいいのか」との声が上がり始めています。
1〜3号機すべてが稼働した場合、取水時より7℃上がった温排水が毎秒146立方メートルも流され、石狩川の平均流量・毎秒113立方メートルを上回ります。周辺沿岸では、年30万尾ものニシンの稚魚放流事業が3年間おこなわれていますが、沿岸漁民は常に影響を心配しています。
同時に、泊発電所には周辺4ヵ町村から通常運転時で416人、定期検査時には700人近くもの方が働いています(岩内町資料より)。関連する下請企業などもあり、原発の停止などで「自分たちの仕事はどうなってしまうのか」との不安があることも事実です。
●国や道の責任で、財政面も含めた経過措置の具体化を――原発推進が国策で進められた以上、関係自治体の置かれた現状を「自己責任」で解決するのではなく、財政面も含めた経過措置を、国や道の責任で具体化することを基本に据えるべきです。
削減され続けてきた地方交付税を元に戻すなど、憲法で保障された地方自治の姿が発揮される仕組みに切り替えることも重要です。
●地域資源を生かした町づくりの住民議論を――周辺4ヵ町村は自然環境にも恵まれ、農産物・水産物の特産品も人気が高く、農林漁業を基幹産業にした町づくりが進められてきました。地域資源を生かした町づくりへ、住民や専門家などを交えた審議会をつくるなど、住民の声が反映された本格的な議論が進むことが期待されます。
泊原発を停止し、安全に廃炉にするうえでも長期の年月がかかり、関連する仕事が今すぐなくなるわけではありません。何より北電には事業主として雇用を守る社会的責任があり、停止・廃炉を理由に一方的に「下請切り」「雇い止め」などあってはなりません。
再生可能エネルギーの爆発的普及にも、発電所従事者の持つ技術が最大限生かされるよう、国と道、北電が責任を負うべきです。
ここまで原発推進政策が続いてきた背景には、政官財による「原発利益共同体」の存在があり、北海道も、その例外ではありません。
真下道議の質問で、道の課長級以上の幹部4人が北電および関連子会社等へ天下りをしていたことが明らかになりました。高橋知事は「北電からの人材紹介にこたえた。再就職要綱違反ではない」と正当化する有様です。経済産業省からも、過去50年で5人が切れ目なく北電役員に天下りしています。
高橋知事自身も、2004年から毎年ほぼ同じ日に、北電の常勤役員全員から役職に応じた金額で政治献金を受け取っています。党道議団の追及があり、2009年からは横並び献金は崩れていますが、匿名に変更して献金は続いています。高橋知事は「個人の意思による個人献金」と繰り返していますが、役員が退職後に献金をしていない事実から見ても、形を変えた企業献金であることは明瞭です。
献金は自民党にも渡り、民主党も道議会では知事の政策予算に賛成するという態度では議会でも厳しく知事と道の姿勢をただすことはできません。
国政とともに、このような原発利益共同体の「環」を道政でも断ち切らなければ、厳しい監視・規制も、原発からの撤退も望むことができません。道民世論と結びつき、運動と議会論戦でこの「環」を断つために、日本共産党は力を尽くします。
青森県には東通原発があり、2008年に経産相が大間原発の設置許可を認め、電源開発(株)が大間町に立地・建設を進めています。しかし大間原発も泊原発同様、多くの危険性を抱えています。
最短距離で23kmしか離れていない函館市では、工藤函館市長が大間原発建設の「永久凍結」を求め、北斗市・七飯町などの首長も同意しています。6月には道副知事と工藤市長が上京し、民主党や政府、電源開発などに要請をおこなっています。市民の大きな不安が反映された行動であるにもかかわらず、民主党・岡田幹事長は大間原発の建設続行を明言しました。
大間原発は、軽水炉の全炉心でフルモックス燃料を使用するという世界で初めての事業であり、その技術上の安全性が心配されています。以下のような問題点も明確であり、建設は中止すべきことこそ最善の道です。
重大な危険性の1つは、敷地内の地盤が劣悪だということです。予定されている原子炉建屋位置の北側約300mのところに、何条もの断層が確認されています。それらのうち最大の落差は110mと予測されており、シームと呼ばれる地層と地層の間の薄い層も確認されています。電源開発は、これらの断層を活断層と認めていませんが、大きな地震の揺れで断層面がずれたり、シームがつぶれて地盤が傾けば、原子炉は致命的な損傷を受けます。
下北半島を挟んだ形で存在する海底活断層も多く、研究者の調べでは、大間原発周辺で7000年〜6000年前以降にM7級の地震が2回発生しており、その活断層は下北半島の北側と西側に存在します。
火山にも近いことから、大量の火山灰の降下と堆積も心配されます。火山活動によって電気系統システムが損傷を受けることなど、電源開発は想定していない計画です。
下北半島には大間原発にとどまらず、稼働中の東通原発や建設中のむつ中間処分施設が存在し、六ヶ所村再処理施設も函館市から100km圏内です。大間原発はもちろん、どこかでひとたび事故が起きれば、道南地域に与える影響は甚大です。
大間原発でひとたび事故が起きれば、さえぎる物のない海上を通り、道南地方に放射能被害が及ぶ可能性があります。海水も汚染されれば、基幹産業である漁業は壊滅的な打撃を受けます。原発の始動により循環される海水は、7℃高い状態で毎秒91トンも海に戻されるだけに、漁師が不安になるのも当然です。生態系全体が崩れるのではとの、心配の声があります。
このような影響があるにもかかわらず、立地自治体ではないことから北海道や函館市などには、国や電源開発などから十分な情報が届かないという状況です。EPZの範囲外でもあり、住民の避難訓練などもおこなわれてきませんでした。
すでに道南地方では大間原発建設に反対・凍結という点で、合意が広がっています。重要なことは、これを道南地域だけの問題にとどめず、北海道の総意にすることです。
道南地方は、青函トンネルや連絡船などによる「北海道の玄関口」であり、ここでの放射能汚染は道南地方の被害にとどまらず、全道的な流通や観光にも大きな影響を与えます。
まず青森県と道・函館市などと防災連絡協議会を設け、知事が先頭に立って北海道の総意を伝えていくことを日本共産党は求めます。じゅうぶんな情報公開を要求し、道と函館市として専門家の知識を総結集した科学的な検証体制をつくり、道南地方住民の声が反映される枠組みの構築を急ぐべきです。
どの原子炉であれ、莫大に生み出される放射性物質=「死の灰」を安全に閉じ込める技術を、まだ人類は手にしていません。しかし、日本政府は破綻済みの核燃料サイクルに固執しています。
高速増殖炉・もんじゅは1995年、冷却材として使うナトリウムが漏れ出し、火災を起こすという事故を起こして以来止まったままです。水分と反応した場合、爆発的な火災を引き起こすナトリウムに関する基礎的な技術すら確立されておらず、再開の見通しもないまま、すでに3兆円もつぎ込まれています。六ヶ所再処理工場も、ガラス固化体製造工程がトラブル続きで操業できない状況で、仮に40年間操業したとしても使用済み核燃料の再処理費用は1トン当たり4億円に達します。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、加工し、原子炉の燃料にするために膨大なエネルギーが浪費され、安全性・経済性からも核燃料サイクルは破綻済みです。
「死の灰」は100万年にわたって生活環境から隔離しなければならず、そのうち高レベル核廃棄物処理は現在、300m〜1kmの地下に埋めることが唯一の方法とされています。しかし、高レベルガラス固化体は劣化し、何より地下水が豊富で、かつ火山列島と言える日本に「深地層処分」の適地はありません。
これまで国は財政力のない過疎自治体に目をつけ、高レベル核廃棄物再終処分場を誘致させようとしてきました。「文献調査」段階で毎年2.1億円、「概要調査」段階では20億円が、受け入れ市町村と都道府県に交付される仕組みになっています。
泊原発3号機の使用済み核燃料プールは、今後27年分の使用済み燃料を一時保管できるようになっており、1号機などの燃料も移されてくる予定でいます。ここでの保管後は六ヶ所村の処分センターに送ることになっており、その後の保管については見通されていません。
そこで大きな焦点となるのは、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発をおこなっている、幌延町の深地層研究センターです。今年7月の時点で、約250mの立抗(たてこう)が2本、水平方向にも180mを越える2本の坑道が掘削されています。「核廃棄物の最終処分場ではない」とされていますが、このまま最終処分場が決まらない場合、候補地とされる可能性が排除できません。そうなれば、泊のみならず全国の核廃棄物の保管場所となることにもつながります。
日本共産党は、核燃料サイクル=プルトニウム循環方式からの撤退を掲げています。危険な泊と大間のプルサーマル計画の中止、幌延を含む道内のどこの自治体であれ最終処分場にさせません。原子力利用の研究をつづけ、最終処分方法が確立するまで、核廃棄物が安定的に管理保管される必要があります。
北海道は、広大な土地と河川・森林を持ち、長い日照時間や定期的な風力のある地域を持ち、木質・家畜糞尿などのバイオマス資源が豊富であることは言うまでもありません。
2009年に道が開催した「北海道エネルギー問題懇談会」は、北海道のエネルギー資源などを分析し、関係機関などにも委託してエネルギーの需給構造や、自然エネルギーの賦存量を調査しています。
それによれば、例えば太陽光の道内賦存量は約74.7PJ(ペタジュール)で、これは2005年時点の国内導入量の約6倍にもなります。電気事業連合会による「電気事業者便覧」によれば未開発水力だけでも約122万kWと試算しており、これだけでも泊原発1・2号機分を超えます。地熱や風力、バイオマスなども実現可能性のある計算がされており、これを実行に移すならば原発依存から脱却する道が見えてきます。
北海道の自然エネルギー自給率は3.38%で、地熱発電で先頭を行く大分県(25.24%)や、富山県(16.76%)、秋田県(16.50%)などに比べて大きく遅れをとっており、全都道府県でも26位です。他県が自然エネルギーの普及は可能であることを証明しているなか、賦存量が豊富な北海道でできないはずがありません。
いま、大手企業によるメガソーラー計画などが浮上しています。また、巨大化している風車発電は自然環境保全や景観上の問題、低周波の問題などが懸念されており、道内では石狩海岸沿いでの風車建設などでも問題点が指摘されています。大規模化に偏重することは、いったん事故などが起きた時には損失も大きく、電力供給上の不安が生まれます。外国技術への依存や、収益の大半が大手企業に吸収される構造など、雇用や地域経済の面から見ても、慎重な検討もなく強行するべきではありません。 大事なことは、広大な北海道だからこそ自然エネルギー設備も小型・分散化をはかることです。各地に多様な自然エネルギー活用の条件があり、地元業者の技術を生かした事業によって雇用と地域経済にも良い影響を生み出すことは、すでに外国の例をもとに研究結果も出されています。 このような事業を市町村や地域社会が主体として担い、国や道が財政面などで応援する仕組みが必要です。民主党政権や高橋知事は自然エネルギーの導入を進めるとしていますが、同時に原発の必要性も強調しており、これでは本格的なエネルギー政策の転換とはなり得ません。
電力に占める再生可能エネルギー比率がすでに17%を占めるドイツは、改定した再生可能エネルギー法における電力買い取り条件の整備が普及を後押ししています。
日本でも再生可能エネルギー買取法案が国会で審議されていますが、買い取り価格上乗せを大企業(大口の電力消費者)だけ免除する規定や、自然エネルギーによる発電の全量買い取りをしなくてもよい「例外」が設けられるなど問題があります。「例外」規定を削除し、自然エネルギーのあらゆるセクターの発電を固定価格による全量買い取りとすべきです。
現在ある風力発電について早期建設の分の5割を買入れ対象から除外する措置は是正を求めます。
吉井英勝衆院議員の試算によれば、国民が電気料とともに支払っている電源開発促進税収は毎年約3500億円にのぼります。これを原発に使わず、まるまる太陽光発電の普及に使うと仮定すると10年後には年間515億kW時の発電電力量となり、人口比で換算すれば、道内で年間21億kW時と計算されます。北電の年間総発電量を大きく超えることができます。
北電は、風力の買い取り上限を36万kW(総発電出力の5%)と設定し、法案成立後でも「新規風力は買わない」ことを決めていますが、その姿勢を改めるべきです。北電は地域独占が許されている公益企業としての責任で、道内各地で自然エネルギーによる発電が促進されるよう送電網を整備すべきであり、発送電分離も検討が必要です。
自然エネルギーの爆発的普及にあたっては、今ある法律の見直しが必要な場合があり、道として研究者や専門家などによる委員会で早急に意見を取りまとめ、国による審議を求めます。
すでに道内では、再生可能エネルギーの活用が広がっています。足寄町では、研究者も加えて「地域新エネルギービジョン」をつくり、雪氷や風力、ふん尿バイオガスなどの開発・普及を進め、それが地域雇用をつくる契機にもなっています。今年度は「世界に誇れる『バイオマスタウンあしょろ』をつくろう」と呼びかけ、まちおこしにもつなげています。
芦別市でも、木質バイオマスによる熱を温泉施設や農業用ハウスへ利用する実証調査をおこない、事業化に向けた課題を整理して実現の道を開こうとしています。
再生可能エネルギーを普及しつつ、自発的意思にもとづく節電・省エネ化、24時間型社会の見直しで電力を確保する取り組みも重要です。その際に、医療や介護、福祉分野など命を預かる部門に強制的な節電を求めることがあってはなりません。自家発電などを生かし、産業界への協力を求めることを優先するべきです。
同時に、北海道のエネルギー消費動向を見ると、広大な面積から運輸部門が全国より多く、家庭部門も全国では全体の14%程度なのに対し、積雪・寒冷地という条件のある北海道では20%を占めています。農林漁業におけるエネルギー消費量も、他県の軒並み3倍を超えます。
だからこそ、北海道の地域資源を生かし、地域で隅ずみに行き渡る小型・分散型の再生可能エネルギー設備が求められています。ドイツではペレットストーブに1000ユーロ、ボイラーに2000ユーロの設備費助成がおこなわれて、バイオマス熱利用が増えています。先進的な事例にも学び、北海道でも具体化を急ぐべきです。
自然エネルギーを爆発的に普及するためには、野心的な目標を掲げ、専門家の知見も結集した独自の推進体制が必要です。
北海道でも10年をメドに再生可能エネルギー自給率を20%まで引き上げ、2050年までに60%へ引き上げることを日本共産党は提案します。これは、温暖化対策の貢献にもつながります。意欲と活力に満ちた道職員による組織横断的な「自然エネルギー局」(仮)をつくり、道内での普及とともに、国へも積極的に働きかけることを目的とします。
計画の策定には公募を含めた道民会議を設置し、住民参加・住民共同型で進めることで地域の活性化も同時にはかります。
原発とどのように向き合い、新しい日本と北海道をどう展望するか――すべての政党・政治家に問われている重大な課題です。国民・道民の前に考えを明らかにして、責任ある行動を取らなければなりません。
日本共産党は、中央委員会の「提言」とともに、北海道委員会として泊原発などの問題点を整理した今回の「提言」を広く団体・個人に届け、原発に頼らない北海道づくりに向けた対話と共同の先頭に立つ決意です。
私たちは、福島事故が起きる以前から原発の問題点を指摘し、立地・稼動の是非を問う道民的運動を広げる役割を果たしてきました。泊原発の稼動をめぐる1988年の「原発道議会」では4人の党道議団が論戦の先頭に立ち、住民投票条例を求める道民運動でも、道議会での結果は52対54と否決されましたが、一致点にもとづく活動でこの運動にも取り組んできました。このような活動の蓄積のうえに今の私たちの揺るがない立場があります。
民主党政権は、原発事故に対する危機管理能力が問われる事態に陥っています。これまで原発推進政策を取ってきた、自民・公明両党からの反省も聞かれません。日本共産党と「しんぶん赤旗」がスクープした九州電力の「やらせメール」問題は、原子力安全保安院が世論誘導をはかっていたことまで明るみになり、これまでの原発推進の正当性が根底から問われています。原子力行政を、今こそ大本から見直すべき時です。
道民投票と住民投票・アンケート――道民・住民みずからエネルギー政策選択の主体となることが大切です。道民レベルでの道民投票条例や、市町村レベルでの住民投票ないし住民アンケートの実施を検討します。
北海道が変われば、日本も変わる――力をあわせて、再生可能エネルギーの宝庫である北海道から原発撤退の意思を示そうではありませんか。日本共産党は、その実現に全力をあげて奮闘します。