やらせの陰 巨額交付金/北電泊原発プルサーマル計画 | 11.09.10 |
2008年の国、北海道主催シンポジウムで「やらせ」が発覚した北海道電力泊原発3号機。北電は社員らにシンポに参加し、「推進」意見を発言するよう依頼していました。本紙がスクープしました。使用済み核燃料を再利用する「プルサーマル計画」―。不正工作までして住民同意を急ぐ背景に何があるのか……。
(遠藤寿人)
プルサーマル計画受け入れの見返りは、国から道に支払われる60億円の巨額交付金でした。交付金とは「核燃料サイクル交付金」。この交付金の特徴は「平成20年度(08年度)までにプルサーマルの実施受入れに同意した都道府県」―など、申請期間に「締め切り」を設けていることです。「締め切り」までに住民同意を取りつけなければ、交付金にありつけない仕掛けです。
当時、電力業界は10年度までに16〜18基でのプルサーマル導入を目指していました。これを受け国は06年、「先進的に努力した自治体を支援する」と交付金を開始。「時限的にプルサーマル計画を加速させる“起爆剤”として一定の効果があった」(経済産業省)と交付金の役割を評価しています。
計画同意までの期間は、玄海原発(佐賀)1年10カ月、伊方原発(愛媛)2年5カ月に比べ、泊原発はわずか「11カ月」でした。
日本共産党の大田勤・岩内町議(北海道)は「08年は北電が地域説明会を7カ所で連続的に開き、国や道がシンポを開くなど、あっという間だった。当時は『3月までにやらないと60億入ってこない』とうわさされていた」と振り返ります。
60億円の交付金は「地域振興計画」に基づいて、泊、共和、岩内、神恵内の周辺4町村に配分されます。長年の「原発マネー」で4町村の財政はゆがめられています。財政に占める発電所の固定資産税と原発交付金、21年間(1989〜2009年)の合計は、泊村546億円、共和町29億円、岩内町51億円、神恵内村27億円に達します。
プルサーマル導入にあたって4町村長は、高橋はるみ道知事に地域経済への配慮を要求。知事は09年3月、交付金の配分を検討すると約束しました。同知事は旧通産官僚。北電の役員から組織的な政治献金を受け、東京電力福島第1原発事故後、いち早く泊原発の営業運転再開を容認しました。
1年足らずの説明期間。国と道主催シンポで“やらせ”発覚、電力業界との癒着、巨額交付金―。安全や住民の納得より「プルサーマル導入先にありき」ではなかったのか……。
日本共産党の真下紀子道議は08年6月の予算特別委員会で「交付金と引きかえに危険性の増幅を押しつけるようなエネルギー政策の転換を求めるべきではない」と迫りました。
電源3法は、発足した当時は単純な仕組みで、発電所の建設期間中に公共施設を造るための交付金を支給するだけだった。ところが電力需給の緩和で財源が余るようになり、次々に新たな交付金が追加されていくと同時に、純粋な迷惑料としての性格を逸脱して、非常に政策誘導的な性格を強めていった。プルサーマルなどの政策に協力すれば金額が上積みされるとか、定期点検の間隔の延長を認めれば増額するとか、おまけに申請に期限をつけるとか、露骨なやり方が目立っている。こうしたやり方はもう通用しないということを、自治体の側から意思表示したほうがいい。
(11年09月10日付「しんぶん赤旗」より)
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