北海道自然保護協会 副会長佐々木 克之
国交省がいくつかのダムを見直し・検証することになり、建設を推進してきた地方整備局(道では開発局)・自治体による検証作業が進められようとしている。ムダなダム建設が進められる危険性が高く、道内のダム批判団体は、ダムに批判的意見を公正に聞くよう申入れを行なっている。
国が建設主体のサンルダム(天塩川水系)と平取ダム(沙流川水系)、道が主体ですでに本体工事が進められ、検証対象となっていない当別ダム(当別川)を例に述べる。
いずれも、「過去最大の流量となった洪水被害を再び引き起こさないためにダムが必要」としている。これらの洪水を調べてみると、堤防が不備であったか、本流の流れが強く支流が本流に流れ込めないために溢れた内水氾濫であった。したがって、不備な堤防を強化して、支流の水をポンプで本流にくみ出す措置をすれば再び洪水は起きない。しかし、国や道は、過去最大の流量より大きい流量を想定して、その分をダムで調節すると主張している。ダムでも防ぎきれない想定以上の洪水でも被害を大きくしないために、堤防強化が重要であるという研究者の指摘に、国や道は答えていない。
いずれも水道水のためにダムが必要と主張しているが、節水技術が発達、人口が減少するのに、今後水道水需要が増加すると予測している。
札幌市は10年以上も約61万m3/日の需要なのに、今後需要が増加して2035年には現在の保有量約83万m3/日を超えるとして、当別ダムを必要としている。ダム建設にムダな税金が使われるだけでなく、市民に水道料金値上げのつけがまわる。灌漑用水についても同様である。
ダムには年々土砂が堆積する。日本のダムの土砂堆積速度は平均1.1%/年なので、およそ90年でダムは土砂で満杯になる。沙流川の二風谷ダムは1997年竣工、13年後の2009年にはすでに40%以上堆積。ダム下流では砂が不足して環境が悪化して、海岸は浸食される。とくに、海と川を行き来するアユ、ウナギ、サクラマスなどは昔と比べて大きく減少している。戦後間もない頃、子どもたちは川で遊び、魚をとったが、今は見る影もない。サクラマス(富山の押し寿司の食材として有名)漁獲量は北海道がダントツであるが、昔に比べて約1/6。サンル川は日本でも有数のサクラマスが遡上する川であり、ヤマメ(サクラマスの子ども)密度が日本一なのに、ダム建設が計画されている。
日本の既設ダムは約2700(71/10000km2)で、密度は先進国でダントツ、さらに建設中が約2800もある。ダムの適地はもうないといって間違いない。現在の税金のムダを省き、将来に豊かな環境を残すために、ダムによらない治水・利水を行うときである。熊本県球磨川の荒瀬ダムは撤去が決定し、ダムから土砂が流出し、球磨川河口では貝や魚が戻ってきて注目されている。今後はダム撤去が進む可能性がある。
こうした中で、高橋知事は、11月1日ダムに批判的な団体と面会し、「国交省の指示の通り検証作業を進めるが、ダム批判の意見も公開の場で聞いて、道としての考えを集約していきたい」と述べた。今までダム推進一辺倒であった知事の責任が問われるとともに、今後の対応が注目される。
(10年12月05日付「ほっかい新報」より)
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