「国と市町村の責任」と思われがちな保育分野には、施設条件整備など道が果たすべき役割がたくさんあります。しかしこの間、道の保育政策は、国の制度の実施・具体化が基本で、財界・政府が北海道で突破口をつくろうとしている規制緩和への防波堤の役割が弱く、北海道の切実な課題への対策の弱さが問題です。
待機児童解決に直結する施設整備に大きな役割を果たしているのが「安心こども基金」です。国が出資し都道府県に基金をつくり、保育環境整備に使われます。しかしこの基金による助成のほとんどは国によるもので、道が一部出資しているのは、①認定こども園関係の事業費、②放課後児童クラブ設置促進事業、③特別保育事業推進費補助金(延長保育)の3つだけです。認定こども園は、条例で設置され道に責任があるので、助成の一部を道が行っています。
この認定こども園自体が、保護者と園との直接契約方式や保育料の自由設定など、現在菅民主党政権が推し進めている保育の市場化を先取りしたもの、といわれる問題の多い制度です。「地方裁量型認定こども園をこれ以上認定しないでほしい」という関係者の申し入れに対しても、道は推進方針を変えません。
延長保育の助成も、「事業仕分け」で国の一般会計から特別会計になった際に、都道府県も負担するようになったためで、道が主導的に実施している訳ではありません。
多くの関係者から安全性への不安の声がある給食の外部搬入については、国が最低基準を緩和した直後に、道は条例を改悪し、認定こども園で認めました。日本共産党道議団以外の、民主党を含む全ての政党がこれに賛成しました。関係団体の申し入れに対しても道は、給食外部搬入に対して安全指導を強調するだけで、認定こども園の外部搬入方針も変えていません。地産地消が叫ばれる今日、農業・漁業王国の北海道でこそ安全・安心な給食を行うことが地方自治体の責任であり、道はその責任を果たすべきです。
都市部の待機児童問題と同時に広大な北海道では、過疎化が進むへき地保育の充実が求められています。関係団体はこのための道独自の予算措置を求めてきました。
標茶町では保育所が、通ってない親子や地域の高齢者に開かれ、センター的な役割を果たしています。このような少子化が進む地域から保育所をなくさないための取り組みへの支援が求められていますが、道はへき地保育所の交付金基準緩和を国に求めるだけです。
高額保育料の軽減について道は「国に要望」「市町村に働きかけ」というだけです。大分県では県と市町村が1/2ずつ負担し、認可・無認可の別なく、所得制限もなく、第2子で半額、第3子以降全額免除する保育料軽減制度を実施。福井や群馬、長野では、障がい児や乳幼児の保育士定数加算を県独自に行っています。
道も単独予算の「地域づくり総合交付金」で、認可外保育所の小規模修繕やへき地バス補助など行っていますが、予算規模拡充と運用の改善・発展が求められています。
(10年11月14日付「ほっかい新報」より)
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