北海道生活と健康を守る会連合会(道生連) 細川久美子
北海道の生活保護の状況は、2005年度の生活保護受給世帯は、3万6885世帯(5万7705人)14.7‰(パーミル・千人当たり)が、毎年増え続け、09年度では、受給率が全国一で10万3387世帯(15万87人)、27.1‰、わずか4年間で12.4ポイントも上昇しました。
これは小泉構造改革による社会保障切り捨ての施策が長期の不況にさらに拍車をかけ、人間らしい生活ができない人々を膨大に作り出してきた結果です。「倒産(失業)したので生活保護の申請に行ったけど受け付けてもらえない」「通院したい病院を許可してもらえない」などの人権侵害の実態が全道各地から寄せられてきました。
当時の道庁との度重なる交渉で、その実態を突き付け、調査させ、人権侵害が起きる問題は、道庁の保護行政の指導の在り方にあると追及し、交渉の積み重ね、改善を迫ってきた結果、毎年3月に行う「査察指導員会議」などでの徹底がされるようになって、人権侵害をさせない行政へと変化させてきました。世論と運動、闘うことなしに人権侵害を克服することはできないと確信しています。
その一方で、本気で道民の命とくらしを守る保護行政を行おうとしているわけではありません。
現在、釧路市をはじめ、函館市や小樽市など40‰を超える高い保護率となっていますが、それでも仕事を失い、住まいを無くした働き盛りの人たちが、有り金も底をつき、路上でくらすという考えられない事態がいまだに続いています。
派遣切りや雇止めによって仕事も家も失った多くの労働者のいのちを守るために、08年の年越し派遣村から始まった反貧困相談会は、北海道でも取り組まれ、昨年2月から始まった、「守る会」も参加するSOSネット北海道の電話や来所の相談は、09年2月から今年8月までの19か月で4千件を大きく超えています。
居宅で生活できなくなった人たちのためにある救護施設は全道でわずか9か所(960人)。札幌にある4か所の救護施設(定員400人)では、家を失った人たちの生活保護申請にかかわって、定員の2パーセント、わずか8人の部屋を確保し、保護が決定するまでの間のシェルターとして利用していますが、なかなか利用できないのが現状です。そのため、SOSネットなど民間の団体が、カンパを募りシェルターを確保する運動が続いています。
本来こうした事業は、国や北海道が行うべきものです。札幌市は、SOSネットなどの交渉で「市の責任で住宅のない人たちのために、ビジネスホテルと契約して一時保護施設にする」と言明しました。ところが、北海道は道営住宅の有効活用も全く行わない(札幌市は市営住宅48戸、ビジネスホテル5室活用)どころか、国が示したホームレス対策の住宅政策の実施に踏み切らず、道民の善意に任せきりの行政を進めてきています。
その結果、路上で暮らさなければならない人たちが、厳寒の釧路や旭川など全道各地に広がっています。
札幌市で路上生活をしていたAさんは、岩見沢から6年前に札幌に出てススキノで働いていましたが、その仕事もなくなり、一度は生活保護を受給できましたが、6か月間仕事がみつからなかったため、(「稼働能力がありながら就労しないのは法4条に違反する」として)保護を切られ路上生活になり、あまりのひもじさに、万引き、逮捕。逮捕時に母が来て2万円くれて「もうこれ以上は応援出来ない」と言われ、その後ネットカフェなどに泊まりながら仕事を探すが見つからず、また、保護課に行くと、担当者に「住所がないなら申請は受けられません」と冷たく言われて、申請することすらできませんでした。「守る会」とつながり、申請同行した結果、やっと受給できました。
保護受給後、仕事が見つからず、あっという間に6か月が過ぎてしまい、また路上に戻るケースが後を絶ちません。
寒い冬に向かっていく季節が目の前に迫っています。家を失った人たちの住宅確保が急務の課題です。合わせて、仕事をしたいと一生懸命頑張っている人たちの新たな訓練施設も必要です。
厚労省の道内4か所(苫小牧、北見、滝川、釧路)の地域職業訓練センターの廃止は逆行するものであり、存続と拡大を強く要望すべきです。また道が受け皿として引き継ぐことも選択肢として検討すべきです。
現在の保護基準は北海道の最賃を26円上回っていますが、決して「健康で文化的」とは言い切れません。年齢によって食する量が違うということで、70歳以上の高齢者は支給されていた老齢加算が削減され、親戚や友人の葬式にも参列できないどころか、お風呂へ入る回数も減らしているのが現状です。しかし道はその復活を求めようともしません。
生活保護を受けていたとしても健康で文化的とは言えない現状ですが、貧しい北海道の社会保障政策と経済不況の中で、生活が出来ない人たちが増え続けています。こうした北海道の現状をふまえて、貧困を打開するために道政がイニシアチブをとり、道民のいのちとくらしを守るために積極的な施策を展開するよう転換が求められています。
(10年09月19日付「ほっかい新報」より)
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