日本共産党 北海道議員団ホームページ
ホーム
談話
学校耐震化への独自措置もなく、くらし犠牲の道予算

学校耐震化への独自措置もなく

くらし犠牲の道予算

6月14日から、道議会第2回定例会が始まりました。真下紀子道議は29日、一般質問に立ち、7月1日〜6日、予算委員会で質問します。

知事選、道議選がおこなわれた今年度、今定例会に「政策予算」2760億円が提案されました。当初予算との合計2.8兆円は、前年度当初比マイナス0.8%となりました。

大震災復旧対策〜「役割発揮」かけ声倒れ

高橋はるみ知事は6月8日の記者会見で、予算案について「1.東日本大震災の復旧対策と本道の役割発揮」と「2.危機克服と未来をひらく道づくり」の“2つの柱”を掲げました。

「震災復旧対策」は、新たに41.5億円計上され、2回の補正との合計は113億円。真下紀子道議が臨時会で提案した放射能の影響のモニタリング調査や、漁協等が漁船を導入する事業に44.7億円、個人養殖施設の復旧支援に29.8億円、被災した子どもの就学支援に1.3億円などが盛り込まれました。

しかし、「第一の柱」としては不十分な中身です。

「津波浸水予測図」の見直しは3.8千万円、沿岸市町村のハザードマップづくりの促進は370万円に過ぎません。81の沿岸自治体のうち46市町村がマップをつくっておらず、また、避難計画の策定済み自治体は15だけ。防災教育の推進(480万円)も地震・津波のリーフレットを配る程度で、現状を抜本的に変える“本気さ”が伝わってきません。

震災から3か月以上が経過し、経済・雇用対策の強化が急務です。しかし、5月27日におこなったわが党の予算要望への回答では、震災に伴う雇い止め等の実態調査は国任せです。被災した漁業者らが新たなスタートを切るための二重債務の解消について、一定期間の返済猶予にとどまり消極的です。

上下水道やガスなどライフラインの耐震化や、7割台にとどまる消防職員の充足率向上についても新たな予算措置はみられません。

経済・雇用〜まるで「商社・北海道」?

若者の雇用をともなう新事業などをおこなう中小企業者らに、雇用人数に応じた奨励金を支給する事業(1.1億円)は、党道議団の要求が反映されたものです。「地域小売商業条例」にむけた調査費や商店街の次世代担い手育成支援は、買い物難民対策や地域で暮らすことを保障する対策の第一歩としなければいけません。

しかし、予算の全体の中での力点は、「海外」「観光」に置かれ、中国や韓国、アジア新興国などをターゲットとした観光客誘致(1.5億円)などの事業が並びます。上海

に北海道事務所を整備する予算も計上され、「道が商社化した」という批判が上がるほどです。

本来、力を注ぐべき第一次産業の担い手対策は、農・林・水産の3分野の予算合計額が、5年間で5.8億円も削られました。

環境・エネルギー関連分野は、「低炭素型工場等誘致事業」や「環境ビジネス創出育成事業」など、知事が志向するのは「ビジネス」であり、本州資本の誘致です。

各地域の産業と資源を生かした再生可能エネルギーの推進を思い切って進めるべきですが、地域づくり総合交付金に「地域環境サポーター分」として5千万円が計上されたに過ぎません。山崎幹根・北大大学院教授が、「自然再生エネルギーの利用拡大への取り組みは弱い」と指摘するとおりです(「道新」9日付)。

福祉・医療、教育〜「活力ある持続可能な地域づくり」にそぐわない

「総合内科医養成研修センター」運営支援に、昨年度から5千万円アップの1.3億円が計上されるなど、医師確保対策を拡大したことは、危機的な地域医療の現状から当然です。

震災から子どもの命を守るための保育所耐震化(耐震化率46%)や小中学校耐震化(同67%、全国43位)への道独自の予算措置はありません。

教育では、学力向上、英語教育などとともに、今年度から道徳教育の充実に6千万円が計上されました。一方、高橋知事の就任後、道内公立高校は269から228校に減らされ、「教育を受ける権利」が保障されない状況が広がっています。

地域づくりでは、「新しい公共」の担い手となるNPO支援に1.7億円(2定現計)のほか、「社会的企業」への支援も予算化しています。「自助・互助・共助」を強調し、国と地方自治体の責任を薄め、安上がりの福祉をめざす動さとして軽視できません。

道財政「再建」を口実に道民犠牲を許さない

今年度の歳入不足額は190億円(昨年度比100億円増)。基金の取り崩しや国直轄事業負担金の計上留保などでつじつまを合わせています。しかし、税収や金利によっては、「実質公債費比率」(財政に占める借金返済比率)が6年後に25%を超えるとしています。

知事は記者の質問に対して、「社会保障と税の一体改革」に期待をにじませました。大震災で国民の暮らしと地域経済が疲弊し切っているもとでの消費税増税は、“禁じ手”です。

今年度が最終の職員給与の独自削減について、知事は、来年度以降の延長を否定しませんでした。14日・開会日の執行方針で、「行政改革と財政立て直しの一体的取組をいっそう加速する」と表明,道民へのしわ寄せの強化は必至です。

「例外なき歳出削減」をいうのならば、道営厚幌ダムの建設中止や、北見道路をはじめ高規格道路の路線ごとの検証・見直しをおこなうべきです。何よりも、再選して4年ごとに受け取る知事退職金3600万円の返還を決断すべきです。

(小田一郎)

(11年07月03日付「ほっかい新報」より)